![]() 韓国に「ヘジャンクッ」という料理がある。牛の血で煮詰めたとても濃厚な牛骨スープで、韓国では呑んだ翌朝の定番とか。深酒の後、このスープを飲めば二日酔いにならないという。だがソウルへ旅行したとき、留学中だった知人に是非食べたいと切り出したら、「あれ、トイレのような強烈な臭いがするのよ」といわれ、結局まだ食したことがない。美味でも濃厚すぎて臭いがきつくてはたじろぐ。「オールドボーイ」はそんな血の味のする濃厚さだった。5段階評価で完成度は「★★★★★」だが、お勧め度は「★★★★☆」。なお、アベックで観るのは賛成しない。 酔っ払って街中をふらついていた会社員オ・デスが突然拉致され、監禁される。来る日も来る日も同じ餃子定食を食べながら、監禁は15年間に及ぶ。その間に妻が殺され、自分に容疑が掛けられたのをテレビで知る。自分を閉じ込めた犯人は何者か、なぜ15年間も監禁していたのか? 解放された男が復讐に燃えるが、犯人側から「なぜ監禁されたのか、5日以内に思い出せ」と逆に切り返される。男は復讐を果たせるのか──というのがストーリー。 15年間とはどれだけのものか。映画のホームページの年表を見て考え込む。デスの生活(▼印)と、韓国、世界、日本が対比されている。 1988年 ▼デスの監禁生活開始。 チョン・ドファン前韓国大統領逮捕/ペレストロイカ/日本ではリクルート疑惑。 89年 ▼妻の死を知る。 ベルリンの壁崩壊/天安門事件/平成元年。 90年 ▼自殺を試みる。 東西ドイツ統一/イラクのクウェート侵攻/バブル崩壊。 91年 ▼獄中記を書き始める。 湾岸戦争/ソ連崩壊/雲仙普賢岳が噴火。 92年 韓中国交樹立/ユーゴ解体/PKO協力法成立 93年 ▼刺青を掘る クリントン米政権誕生/細川連立内閣発足 94年 ▼脱出穴を掘り始める 金日成北朝鮮主席死去/ロス地震/松本サリン事件 95年 ▼肉体を鍛え始める ラビン・イスラエル首相暗殺/阪神大震災/地下鉄サリン事件 96年 ペルー大使館占拠事件 97年 韓国でIMF通貨危機/ダイアナ妃死去/香港の中国返還/神戸小学生殺傷事件 98年 金大中大統領就任/長野五輪/和歌山カレー事件 99年 2000年カウントダウン/東海村臨界事件 2000年 南北朝鮮首脳会談/ブッシュ大統領当選/雪印乳業食中毒/三宅島噴火 01年 NY同時多発テロ/アフガン空爆/日本で狂牛病発生 02年 日韓ワールド杯/日朝首脳会談/牛肉偽装事件 03年 ▼脱出穴貫通・解放 ノムヒョン韓国大統領当選/米軍イラク侵攻、フセイン政権崩壊 こうしてみると、あまりに長い。ひと昔どころではない。 失われた15年を取り戻すための復讐に燃える、その気持ちは分からないではない。 既に知られている通り、原作は日本の同名のコミックで土屋ガロン作・嶺岸信明画。ブック・オフでこの漫画を見つけ、立ち読みをした。 少しヤクザ風の男が監獄のような小部屋から突然解放される。この建物では法を犯して時効待ちの者や、誰かに制裁を加えるための拉致などで「監禁ビジネス」が行われている。解放された男は監禁以来10年間(映画では延長されている)。「監禁を依頼したのは誰か。それを調べる方法は分かっている。そのために身体を鍛え上げてきたんだ」。男は街に手がかりを探しに出る。ラーメン屋(違ったかもかもしれない)で、給仕の若い娘と知り合い、そのまま彼女の部屋に転がり込む。セックスする。彼女は処女だった。男はすまなそうな顔をするが、彼女は「うっとおしいバージンを早く捨てたかったの」と受け流し、彼の捜索の手伝いを始める。 なんやこりゃ。ちょい待ちぃ。中年ヅラ下げたヤクザんモンまがいに、いきなりバージンくれてやる娘なんておるわけないやんか。いい加減にしとき。読んでもらおぅいうご都合主義いうても、ザツすぎんとちゃうか。 と、仕事で大阪に暮らした時に覚えたブロークン大阪弁がアタマを駆け巡り、そこで読むのをやめてしまった。(なお、その後に漫画を読了したので感想を下のコメント欄に追記しました) これに対し映画の「オールドボーイ」は、原作に見られたようなスキは全くない。ナゾがナゾを呼ぶ、実に緻密でスリリングな展開だ。コミックのその先を読んでいないので断定はできないが、見違えるほど生まれ変わった。映画は脚色に脚色を三重にも四重にも重ね、分厚く練り上げたのだと思う。その脚色の成功には惜しみなく拍手を贈りたい。 映画でも、すし屋の板前をしていた娘ミド(カン・ヘギョン)が登場し、オ・デス(チェ・ミンシク)の手助けをすることになるが、この2人の出会い方、犯人探しの進め方に無理は感じない。 デスが監禁ビルを突き止め、殴り込みをかける場面などかなり生々しいシーンも多いが、随所に笑わせる仕掛けがあり、娯楽作品としても成立している。話の展開がある程度想像できるところ、やや強引な展開など難点も見られるが、それを凌駕する圧倒的な骨太さがある。 犯人ウジン(ユ・ジテ)の本当の狙いが分かった時には衝撃で言葉を失った。ここまで練り上げられれば、カンヌでグランプリを獲得したのも納得できる。日本で映画化したら、原作コミックをどうひっくり返し、煮たり焼いたりしてもこれだけの作品にはならなかっただろう。 晴れた日の雪山を見上げる爽快さと、気が滅入るほどの重苦しさ。 ただ、ちょっと血の味が濃いのだ。 そこでヘジャンクッのイメージが浮かんできた。これを食べきれる覚悟のある方にお勧めする。 役者についていうと、警官に悪態をついていた下品な酔っ払いが、監禁生活を強いられる中で身体トレーニングを始め、次第に逞しくなっていく姿には驚かされる。チェ・ミンシクの映画は何本か見ているが、思わず「役者やのぉ」と感心してしまう。日常的な男と非日常的な男を見事に演じきれるこの役者は、ロバート・デニーロや緒方拳に匹敵する力量があると思う。 ついでに、ミンシク主演作品では「パイラン」をお勧めする。機会があったらぜひご覧ください。 ちなみにですが、「パイラン」について書いた私のblogは http://oka1in.at.webry.info/200410/article_4.html です。 ナゾの男役のユ・ジテもとらえどころのない不気味さを漂わせて好演。恋愛映画「リメンバー・ミー」に出演した時の甘さいっぱいのキャラも残しており、そのミスマッチぶりがうまい具合に犯人像を作り上げている。カン・ヘギョンもチャーミング。 脚本、役者、演出、どれをとっても完成度が高いことは間違いない。 |
| << 前記事(2004/11/07) | トップへ | 後記事(2004/11/19)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
■ 「オールド・ボーイ」 見なきゃ人生損します。
ウオー!ワゥワー!! エクセレントォオオオォォ!!!! ...続きを見る |
::: 渋谷発!我等 “宝毛団” 〜 ... 2004/11/11 22:38 |
2004年に劇場で観た映画
年が明けたのにいつまでも昨年のカレンダーなので変に思ったら、新しいブログを書かないと更新されないことに気が付いた。とりあえず、昨年、映画館で鑑賞した映画についてご報告する。手帳を調べてみると13本しか見ていない。うち6作品が韓国映画だった。邦画が1本しかないのはレンタルDVDで済ませる癖がついたようで、反省したい。この中では、「インファナル・アフェア2」と「ブラザーフッド」がお奨め度最高点の★5つ。 平たく言えば、入場料を私が払ってあげてもいいくらいのお奨めということだが、人気作ばかりで... ...続きを見る |
おかりんの「Riptide」@Webry... 2005/01/17 18:25 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
レンタルDVDで「ハッピーエンド」(99年)を観たら、これもチェ・ミンシク主演だった。奥さんのチョン・ドヨンが不倫していて、失業中のチェは後ろめたさから問い詰められずにいるが、次第に殺意に変わっていく。これも怖い映画だ。恋人の前では可憐なチョンが、夫の前でブサイクな妻という役をリアルに演じていて感心した。ただ、完全犯罪になるか疑問を感じたので、お薦め度は辛めに「★★★」(十分観る価値あり)。 |
おかりん 2004/12/08 20:30 |
原作のコミックをようやく読むことができた。 |
おかりん 2005/04/17 20:21 |
| << 前記事(2004/11/07) | トップへ | 後記事(2004/11/19)>> |