いい加減にしろ、JASRAC!(「著作権延長問題フォーラム」から)

著作権の保護期間を著作者の死後50年間から70年簡に延長すべしと主張する人たちばいるが、そんな必要あるのかいな? という疑問について多面的に考えさせてくれる公開トークイベントが先日、開かれました。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」が主催したシンポジウムで、賛成派の三田誠広さんから慎重派の佐野眞一さんなど4人がそれぞれに主張を展開。単純な賛成・反対論ではなく、いろいろなアイデアがあると知ることができました。
同フォーラムのホームページ( http://thinkcopyright.org/ )で3月下旬から動画ストリームの公開が始まったようですが、2時間半もあるので、ひとまずサワリを知ろうと思う方のために、各パネラーの冒頭発言の要旨をメモしておきます。
これからの議論の方向性を探る上で役立てば、と思います。

まず、シンポの概要についてメモしておくと、
「なぜ、いま期間延長なのか-作品が広まるしくみを問う」
 3月12日夕、場所は都内の慶応義塾大学三田キャンパス。
   司会:津田大介(IT・音楽ジャーナリスト)
パネリスト:佐野眞一氏(ノンフィクション作家/発起人)
       瀬尾太一氏(写真家、有限責任中間法人
                日本写真著作権協会常務理事)
       林 紘一氏(情報セキュリティ大学院大学副学長
                ・教授/発起人)
       三田誠広氏(作家、社団法人日本文藝家協会副理事長)

フォーラムのホームページから、動画リンクの部分を引用しておきます。
     ■第1回公開トーク、満員御礼
     3月12日(月)18:30~20:30の第1回公開トークには、お陰様で
     定員オーバーの約140名の方にご来場いただきました。
     ありがとうございました。
     まだまだ話し足りなかった方、申し訳ありません。
       公開トークの全映像(2時間半強あります):
         =http://thinkcopyright.org/resume_talk01.html

          ○          ○

 (津田大介氏による著作権問題の経緯説明)

・現行法制では著作権の保護期間は著作者の死後50年間。その間は相続人全員の許可がないと使用できない。欧米は70年間への20年延長を求めている。シンポジウムでは延長派、慎重派の両方から意見を聴きたい。
・1993年にEU発足時、ドイツに合わせて各国が死後70年間に。さらに、米国も98年に20年延長し死後70年間とした。現在は米国から対日年次改革要望で70年にしろと要望している。
・日本は2003年に映画の著作権だけ公表後50年→70年間に延長したが、各分野から著作権法そのものを延長してほしいと要望が出ており、06年9月に創作者団体協議会が延長要望書を文化庁に提出。一方、私たちは慎重な議論をすべきだと考えてフォーラムを立ち上げ、12月に賛成・反対両派によるシンポジウムを開催(今回はその第2回目)。同月に日弁連が延長反対の意見書を提出。青空文庫は07年1月から反対署名を開始している。
・今年1月25日に創作者団体協議会が死後の権利処理を容易にするためのネット上の一括許諾システムを構築するよう提言した。本日は、過去の著作物の利用に関する小委員会を文化庁が立ち上げ、これから1~2年間議論する土壌が整った。

 ■佐野眞一氏の冒頭発言

・50年→70年に延長すればクリエイターの創作意欲が増すという議論があるが、物書きとしてはそんなことがあるか、と思う。俗論中の俗論だ。お子さんのために書くかと問われれば、そんなこと一度も考えたこともない。僕の周りの著作者も70年になったから創作意欲が高まるというのなら、創作者をバカにした議論だ。

・レッシグ(スタンフォード大学教授)が書いた本もあるが、50年たったら著作物は公共財になるべき。入会権と同じように、だれでも利用できるようにすべきだと僕は考える。50年で著作権が切れるのは身を切られる思いという人もいるが、宇宙戦艦ヤマトは吉田まんの「戦艦大和の最後」にインスパイアされなかったか、銀河鉄道999は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にインセンティブされなかったか、とその人に疑問を投げかけたい。大上段に言えば、私たちは先人から与えられた「未来への遺産」を受け止め、新しい価値を加えて未来へ手渡していく、そういう存在だと思っている。

・50年か70年か、という議論はヒートアップしやすいので怖いが、人間の一生の中で著作権を考えることはまずない。平場の議論に戻すべきだ。平たい話をすると、最近話題の森進一の「おふくろさん」問題は面白い。歌は歌ってなんぼ、歌われてなんぼだ。森進一が嫌な奴であるとしても、川内康範はちょっと違うのではないか。本も読まれてなんぼ。シュリンクして死後70年たたないと歌詞をいじるのはまかりならん、という硬直した考え方が僕は嫌だ。

 ■瀬尾太一氏の冒頭発言

・私は70年に延長すべきだと思っている。知的財産への対応が国家的戦略で進められており、日本がこれまで輸入していたコンテンツが、逆に日本から発信していく、流れを逆転するところに来ていると思う。世の中で流通するコンテンツの国際ルールを受け入れないのは良くない。日本が今後世界に発信するためにも当然受け入れるべきルールと思う。

・だが、保護期間を延長するばかりではない。私は、権利者側も作品ごとにどの程度緩やかに使ってくれていいとか、これは使うたびにギャラがほしいと、指示できる時代に入ってきたと思う。今まで著作者は使い方について何も言わず、法に任せっぱなしだったが、今後はこう使ってほしい、と言う意思表示システムやデータベースを構築する時代になったと思う。どれがデジタル時代だろう。

・デジタル時代で劇的に変わってきており、私は70年論者だが、それだけでなく、どう使ってほしいかという意思表示できるシステムがあるべきだ。こういう方ならつかっていいといえる。権利の所在を明確にするデータベースなども世界で共有する時代に入っていくべきではないか。

・写真の世界はかなり長い間公表後10年しか著作権がなかった。最近やっと他のジャンルと同様に50年になった。私の先輩の時代は10年だったので、生きている間に自分の著作物の権利がどんどん切れ、財産権が自分の生きている間にどんどん消滅していた。生きている間ぐらい何とかしてほしいと思ったそうだ。著作権は後で取り戻そうと思っても難しい問題だ。

 ■林紘一郎氏の冒頭発言

・私は著作権保護期間は特許と同じで短い方がいいと思うが、それでは学者になれないので、保護期間の自由化を提案したい。短いものも長いものもあるようにしたらいいのではないか。50年とか70年とかいう保護期間は、超例外的に超長命な作品の保護の仕組みを議論している。法律上、そうした例外的なものを一般法化するのはまことに珍しいことだと思う。例外のものは例外処理すればいい。個別管理できるなら、個別管理すればいい。

・私は1999年に書いた論文で、「D」マークを提唱した。それは後になって分かってきたが、著作権を登録するシステムの構築を提案したのだった。それを明確にしたのはランズとコズナーという人が03年に書いた「Electric Stracture With Property Low」。米国の著作権は登録制度でやっており、登録を更新しなければ、その経済価値がないと理解される。登録料は今40ドル。それによると、1883~1964年の間に登録された著作物のうち、28年経過後も更新されたのは11%以下。1930年に出版された1万冊以上の書籍のうち、2001年でもなお出版されているのは170くらいしかない。それをグラフにすると、短命のものがほとんどであり、長命のものは非常に尾を引くが、決して多くはない。

・この米国のデータに基づいて議論すると、今の著作権制度は、非常に長命な例外的な著作物のために、その他の著作物の期間をどうするかと議論していると言える。そこでL&Cは、更新し続ければ権利が永久に続く仕組みの構築を提案している。更新料は次第に上昇するが、権利をそれだけ長く保護できる。デジタル時代にはいろんな管理ができるので、そうした方向に進むべきではないか。

 ■三田誠広氏の冒頭発言

・私は著作権はできるだけ長い方がいいと考える。著作者の孫に財産を残すというだけではなく、著作物の人格権を守る必要があるからだ。例えば10年後には谷崎純一郎、江戸川乱歩の作品の著遺作権が切れる。そうなるとネット上で、もっと面白くしようと書き換える人が出てくると懸念する。もっとエロチックにするとか暴力的にするとか。それが現代的だと。著作物は勝手に書き換えられては困る。だから著作権は長いほうがいい。まずは70年にしてほしい。

・世界標準が70年だ。ベルヌ条約では50年だが、欧米や各国で既に70年になっている。日本だけ短くていいか。日本には不名誉な過去がある。日本は敗戦後、講和条約を結ぶ時に戦時加算を押し付けられた。戦勝国は日本に賠償金を請求せず、米軍の駐留を条件に許してくれた。ただ、著作権について懲罰を被った。戦前戦中の外国の作品について、著作権が10年間プラスされた。

・なぜ日本が著作縁だけ懲罰を受けたか。実は戦前、翻訳権の10年留保という制度を設け、外国文学について日本で10年間翻訳がでなければ営利目的がないんだと見なして勝手にコピーフリーにしていた。多分、日本が島国根性でやったことだろう。その結果、日本だけが懲罰を受けた。こういうことを日本がやり続けえると日本は孤立する。

・インターネットの時代であり、日本でもコンテンツが世界中に地続きに流通する時代を迎えている。欧米が70年になった直後、日本文藝家協会の当時の江藤淳理事長が「世界標準に合わせよう」と訴えたが、映画の著作権延長が優先され、我々はその間待ってきた。今、議論始めてもの実現までに10年かかる。日本は欧米のコンテンツの最大の輸入国だ。戦時加算が今も残るので、現行の「死後50年」は60年に相当するが、勝手に著作権を短くしていてはグローバル社会で通用しない。一刻も早く欧米と同じルールにしないと、これからのコンテンツの流通に日本が参加できなくなる。

・もちろん著作権がいま、利用者に大きな壁になっている現状は私も認識している。50年でようやく窓が開くのを、いきなり70年にして閉ざしては困るという声がある。これは利用のやり方、システム変更で十分に対応できるだろう。我々は自分の作品を一人でも多くの人に読んでもらいたいので、利用を妨げる気はない、日本から新しい利用のシステムを考案し世界に提案することもあっていい。しかし、今のままでははマズイ。いったん世界標準に合わせてから提案すべきだ。

          ○          ○

4氏の冒頭発言の概要は以上です。その後、約2時間にわたり討議が続きますが、後日、エッセンスだけでも紹介するようにしたいと思います。興味をお持ちの方は、またのお越しを。
あるいは、フォーラムのホームページ( http://thinkcopyright.org/ )で動画をご覧ください。

それにしても、林さんの著作権登録制という提案はまさにガッテン。
70年も保証が必要なのはごくごく一部であって、何でも一律に長い著作権にしろという論理はそもそも無理があるんじゃないか。そもそも欧米の文化をアジアやアフリカ、文化途上国に輸出してやることが世界の繁栄だと単純に考えている国々の無神経さが感じられてならない。
私は昨年の文化の日のブログで、「ディズニーとか特に重要な作品だけ世界遺産のように長期保護にして、それ以外はもっと短くていいんじゃないか」と書いたことがあるけど、ちゃんとした学者さんの間にも似た意見をお持ちの方がいらっしゃるのだ、と我田引水して自信を持ちました。わが意を得たりです。
 参考=歌詞サイトの印刷禁止(その27=文化の日に思ったこと)
       http://oka1in.at.webry.info/200611/article_1.html


保護期間を20年延長しても、著作権料の現在価値は1.5%程度増加するにすぎないそうです。それに著作者に配分されると思いますか? 三田さんはこの後の討議の中で「自分は若いこと、出版社からさんざん作品を突き返され、それによって鍛えられた。その対価として著作権保護は必要だ」といった趣旨の話をしておられましたが、死後の著作権保護で利益を得るのは出版社だけだよね。ビートルズのメンバーが半分他界してしまっても、音楽会社は原盤をいじくってリメイク作品を出して儲けていく。
失礼を承知で言えば、三田さんの出世作の「僕って何」なんて、既に化石化してしまって今は読む気にもならない。三田さんは小説を書くより、著作権団体の会長にでもなって余生を送りたいんじゃないか、と勘ぐってしまう。

一方で、このブログにコメントしてくださった「格差さん」(下部の欄外参照)は、長~い長~い著作権に比べて、産業向けの特許権はさんざん申請書を書いて審査で待たされたあげく20年しか保護されない、と苦言を呈してらっしゃる。
そう、そうなんですよね~。ダブルスタンダードがまかり通っているとは思います。
将来的には、著作権と特許権のギャップを埋めて一本化する時代があるかもしれない。
そんな想像もしますが、どうなるのがいいんでしょうねえ。
著作者が尊敬され、作品が保護され、十分な報酬が保証される一方で、多くの人が楽しみ、自然に利用・活用できる方法はないものでしょうか。

前回記事(2007/01/25)へのトラックバック

 ◆いい加減にしろ、JASRAC!(ピアノバーに有罪とは)
   =http://oka1in.at.webry.info/200701/article_2.html

そうだ、以前コメントをいただいた情報学ブログさんにトラックバックしておこうっと。
   =http://informatics.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_2a2d.html

それと、長崎祐子さんのサボテン☆ブログにも。
   =http://ynagasaki.exblog.jp/4608899/

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この記事へのコメント

  • 格差

    著作権は申請も何も要らず、作品を作って公開しただけで権利が生まれ、本人の死後50年もの長い期間権利は続く。それを70年に延ばすことが論じられている。

    一方、特許権は面倒な書類を作って申請することが必要で、厳密な審査を経てパスしたものだけが特許に登録される。審査にも大変長い期間がかかる。申請にも、特許を維持して行くにもお金を払わなければならない。そして特許権の有効期間は申請後20年である。

    著作権と特許権にはこれほどの格差があります。それなのに更に70年が論じられています。格差社会と言われるが、このような芸術と技術の格差、引いては芸術に携わる人と技術に携わる人の格差についてどう思われますか。芸術家はそんなにまでお金に執着されますか。

    このままでは日本の物作りは早晩駄目になります。
    2007年03月24日 09:42
  • qryswehyjl

    nhmllplb2jo, ehlmtucxdy
    2013年07月11日 06:40
  • tpvhhbmdgx

    onlfkplb2jo, phvmqzpbds
    2013年07月11日 10:44
  • dyqcyjxjuo

    zuvlgplb2jo, depywalojq
    2013年07月11日 14:46
  • djnfdwzpjv

    lozixplb2jo, zuismiocac
    2013年07月11日 18:48
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    2013年07月15日 07:04
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    2014年05月18日 22:17

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